先日、こんな話を聞きました。
「マイ箸を毎回洗うよりも、割り箸を使ったほうが環境にやさしい」
割り箸のほうが環境にやさしいなんて、なんとも直感に反する話ですが、調べてみると割り箸は使いどころがない端材や間伐材を有効活用して作られているらしく、割り箸をつくるために伐採される木はないらしいです。
一方で、マイ箸を使うと使うたびに洗剤で洗わなければいけないので、こちらの方がむしろ環境負荷としては大きいようなのです。
この話は学術書などを参照したわけではないので、もしかしたら事実と違う可能性もあります(少し調べましたが一次情報を見つけられませんでした、申し訳ないです。)が、なにが言いたいかというと、割り箸の話以外にもこういった、「直感に反する事実」がエコの分野にはあるのでは?と、この話を聞いて思いました。
「直感に反する事実」が大好きな私としては非常にこれが気になりまして、そんなタイミングで本屋でたまたま見かけて買ったのが、タイトルの本『これってホントにエコなの?日常生活のあちこちで遭遇する“エコ”のジレンマを解決』です。
この本では、私たちの日常生活において、「どっちを選択した方がよりエコなのか?」を事実にもとづいて教えてくれます。紹介されているテーマは全部で140ほどあるのですが、その中でも特に面白かったテーマをいくつか紹介したいと思います。
エコバッグとレジ袋、本当にエコなのはどっち?
まず面白かったのが、エコバッグって本当にエコなの?って話です。
日本でもレジ袋が有料化されて、買い物にエコバッグを持っていく人が激増してる今日このごろですが、エコバッグとレジ袋、本当にエコなのはどっちでしょうか?
「”エコ”バッグって名前だし自明では?」と思うかもしれませんが、一度あなたも考えてみてください。
正解は、、、
↓↓↓
「エコバッグの使用回数による」
です!
なんとも拍子抜けですが、たしかにエコバッグを買い物のたびに捨てていたら、レジ袋よりも環境に悪いのは当然ですね。
まあそれはさすがに極端だとしても、さほど使用しないうちに捨ててしまったら、エコバッグも環境にやさしくないというのは、意外となかった視点じゃないでしょうか。
じゃあ具体的に何回以上使えば、レジ袋よりもエコなのかというと、バッグの種類ごとに以下の回数が必要とのこと。
- 紙袋:4回
- リサイクル可能なプラスチック製買物袋:12回
- トートバッグ:130回
トートバッグは最近どこ行っても売ってますけど、130回も使わないとむしろ環境に悪いんですね。これはおどろき。
つまりは、エコバッグを使えば環境にやさしいという単純な話じゃなくて、どちらがエコかを考えるときには、
- あらゆるものにおいて、つくる時と廃棄する時には、少なからず環境負荷がかかっている
- 基本的には耐久性の高いものほど、つくる時と廃棄する時の環境負荷は大きくなる
- なので環境負荷を使用回数で割った、「一回の使用あたりの環境負荷」が大事!
ということですね。まことにその通りという感じじゃないでしょうか。
コロナウイルスの報道では、「死亡者”数”」ばかり扱われてますが、本当に注目するべきは、死亡者数を感染者数で割った「死亡”率”」だ!というのと同じですね。
「数よりも割合を見ろ!」というのは、覚えておいて損はない教訓だと思います。
デジタルベースの働き方は、紙ベースの働き方よりもエコなのか?
もう1つ面白かった事例を紹介すると、資料とかをデジタル化すると、紙の使用量が減るのでなんとなくエコな感じがするけど、それって本当なの?という話です。
ここまでの話の流れからして、そんな単純な話じゃないというのは予想できると思いますが、ではデジタル化で発生する具体的な環境負荷には、どんなものがあるでしょうか。
これ、エンジニアでもないとあまり意識しないかもですが、メールサーバーやWebサーバー・データベースサーバーなど、企業が抱えているサーバー用コンピュータを動かすにも大量の電気が使われていますし、コンピュータを動かすと熱を持つので、それを冷やす冷房にも大量の電気が使われています。
つまりは、デジタルやオンラインの活動でも、環境負荷は少なからず発生しているということです。本書によると、デジタルコンテンツによる二酸化炭素排出量は、すでに世界の総排出量の4%近くを占めているそうです。
デジタルコンテンツやオンライン活動による環境負荷なんて考えたこともなかったですが、今後もっとデジタル化が進むので、今よりもさらに影響が大きくなりそうですね。
これはあまりない視点かつ、今後重要度が高まっていく視点だったので面白かったです。
まとめ
というわけで、さっくり読みましたがそこそこ楽しめる本でした。
ただ気になった点もありまして、そもそもこの本に書かれている内容を個人が実践したところで、ほとんど効果ないのでは?ということです。
私個人の考えとしては、個人の努力で改善できる程度なんてたかが知れていて、グリーンなテクノロジーの登場であったり、効果的な政策を用意するとかでないと根本的な解決にはならないのでは?と思っているので、日ごろの行動を少しでもグリーンにする、という本書が前提としているスタンスにあまり共感できませんでした。
逆にいえば、ほんの少しでも地球にやさしい選択をしたい方には、日ごろの行動の指針となるバイブルになるかと思います。日常生活のありとあらゆるシーンについて取り上げられているので。(「死後もグリーンでありたいなら?」という項目すらある)
なんにせよ、本書で扱っている環境のことに限らず、人間の直感は事実とちがっていることも多いので、気をつけなければなあと思った次第です。